昭和9年5月5日、アララギ派の代表的歌人 中村憲吉はこの寓居で46才の短い生涯を終えた。







 ○千光寺に夜もすがらなる時の鐘
       耳にまぢかく寝ねがてにける


 千光寺の石段から、旧居に至る小道に建てられた歌碑。
 この辺りは小公園になっている。




 旧居入り口の塀に埋められた陶板に書かれた再晩年の歌 二首。


 ○病むわれに妻が屠蘇(とそ)酒をもて来れば
      たまゆら嬉し新年にして

 ○病む室の窓の枯木の桜さへ
      枝つやづきて春はせまりぬ
  



○岩かげの光る潮より風は吹き幽かに聞けば新妻のこゑ

○秋浅き木の道を少女(おとめ)らはおほむねかろく靴ふみ来るも

○おく山の馬棚戸(ませど)にくれば霧ふかしいまだ咲きたる合歓(むね)の淡虹(うす)はな

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